家督相続とは
家督相続とは、旧民法において原則、長男が単独で相続をして、配偶者やそれ以外の親族に相続権が与えられないというものです。
これは江戸時代からのしきたりである戸主が家をまもるべきという考え方が法律となったと言われていますが、現代の感覚では理解しづらい法律です。
さらに、昔は相続の原因が死亡だけではなく、隠居するということでも一切の権利等を長男へ継がせるという方法があった為、そのような旧民法があったと考えられます。
家督相続は、1947年の民法改正によってその制度が廃止され、法定相続制度が導入となり、長男だけではなく、配偶者、他の子供にも相続権が与えられることになります。
現在、親族が亡くなっても相続登記をしないまま放置している不動産が増えて問題化しています。
もしも1947年の法改正以前に相続した不動産について今から登記を行う場合には、法改正前の家督相続に則って登記することがあります。
相続税とは、財産の多い人はたくさん納税し、財産の少ない人は納税しなくてもよいという法律になり、つまり相続によって富が再分配される、ということのようです。
相続税が導入された当初は、家や地位、全てを受け継ぐことで義務が大きくなってしまう家督相続については税率を低く設定されていたようです。
そして、ただの財産取得とされる遺産相続に関しては税率を高く設定していましたが、法改正で家督相続の課税方式は廃止となり、相続税と贈与税が制定されて今に至ります。
相続税と贈与税の関係性は、そもそも贈与税とは相続税法によって定められているものですので、贈与税は相続税を補完する為の法律とされています。
家督相続で起こるトラブル
家督相続が法改正されてすでに71年が過ぎていますが、今現在も古い世代において、全てを長男に譲ると考える家長が存在しています。
法改正がされてなお、現代においても家督相続を引きずるトラブルが発生する理由は、家督相続を知る、または経験した世代が多い為です。
法改正以前は、長男の兄が家を継ぐことになるから、弟には一切相続させてあげられるものはない、と聞かされて育つことも珍しくなかったと言います。
現代社会では、このような話から縁遠く、幼い頃から自由にきままに育てられた結果、親の面倒を見ようとしない、ご先祖のお墓の存在も放置という孫が増加しています。
それゆえに自分たちが世を去った後の家の心配をする親世代も増えているという訳です。
そういった意味において、家督相続は生前に全て後継者を決めてしまっていた為、相続のトラブルを先に防いでいたということにもなります。
現代において、家督相続の世代と、法定相続世代との考え方の差は大きい為、遺言を見てから驚くことのないように、生前にきちんとコミュニケーションをとることが大切です。